1ヶ月くらい前だったか、テレビニュースが宇宙エレベータを話題にしていた。そして、10日ほど前には新聞でも取り上げていた。
宇宙エレベーターと聞いて考えるのが宇宙空間での太陽光発電。無尽蔵の太陽エネルギーを高効率で利用できる。それが建設可能になる?と期待が高まる。数十年前から提唱されながらも、莫大な建設費が予想され、夢でしかなかった。
そういえば、春に宇宙エレベーター関係の本が本屋で平積みされていたなー。ということで図書館へ行ってみると、あったあった、本屋で見掛けた本が。タイトルは ”宇宙旅行はエレベーターで”。
読み出すと、説明が平易なので一気に読めてしまった。
一番感心したのが、軌道を10万kmばかりの長さにすると、重力と遠心力がバランスして、特別な支持機構は要らなくなるってこと。なるほど面白い。ただしそれだけ長い軌道は高強度かつ軽い材料が必要で、それがカーボンナノチューブ(以下CNT)ということらしい。CNTの強度は理論上鋼鉄の400倍というから凄い。
著者は、宇宙エレベーターを建設するかどうかはお金の問題で、技術的障害は皆無と読者に思わせる。月旅行、火星旅行、それらの地での長期滞在さえも簡単にできると説明し、宇宙エレベーター建設を後押ししようと読者へ呼び掛けている。ひたすらセールストークの連続。建設費を1~2兆円規模と推測し、建設した国、企業、あるいは個人が世界の覇権を握ることになるとまで言っている。その金額ならば、だれか、あるいは支配欲ある国家が実行してもおかしくなさそう。
事故の想定は当然として、テロの標的となる可能性も論じている点はまあ頂だける。ただし、機関銃のごときセールストークはかえって用心を誘う。私としては著者の意見に100%賛同する気にはなれない。
先ず、人間は無重力や低重力に適応した身体にはなっていない。短期間で地球へ帰ってくればさほどの負担無く地球生活へ復帰できるかもしれないが、長期は相応の体力を要するだろう。それに人間の身体は細菌や微生物、多種多様な生物や物質にさらされた環境に適応したものだ。人体は、重力下で骨格や筋肉をバランスさせながら成長し、免疫機能を発達させていく。地球外での人間の生活については時間を掛けて研究しなければならないと思う。宇宙で長期滞在し世代を重ねるという話は容易に口に出来ることではないだろう。
宇宙エレベーターそのものには反対しない。ただし宇宙旅行を主体に考えているということに違和感がある。確かに自由主義経済世界の中では、一般市民でさえ宇宙に行けそうだという雰囲気を醸成し、エレベーターが儲かりそうだと資本家に思わせ、建設への投資インセンティブを誘発することは、建設推進派にとっては有効だ。しかし宇宙利用の本筋は、公共利用だと思う。著者の主張は、少々勇み足と感じる。
なお著者は、本刊行当時(2006年?)は、宇宙エレベーターのコア技術であるCNTの長繊維化が実現できていないことを認めている。
それから気になったのが、クルーザー(人と物が乗る箱)への動力供給方法。レーザーを地上から、クルーザーに太陽電池パネルを設置してそれに向かって地上からレーザービームを勝者するというもの。大丈夫かな? クルーザー運転時には軌道であるCNTの脇を常時レーザービームが飛んでいることになる。ビームの向きを誤ればCNTを燃やしてしまわないか?
で、冒頭の宇宙太陽光発電についてだが、本書もこれに言及している。しかし、ほんの1,2ページ。というか、宇宙エレベーターが実現すれば大規模な太陽光発電施設を宇宙空間に建設してそこから電力を地上へ送ることになるのは当然といった口調。いかにも簡単という感じ。
宇宙空間での太陽光発電を実現する上での障害は建設費だけではない。地上への送電方法もポイントだったはず。以前読んだ宇宙太陽光発電関係の本ではマイクロ波の利用が一番の候補と言いながら、高エネルギー電磁波を地上へ照射することの危険性に言及していた。
本書 “宇宙エレベーター” が導電性のCNTを使うということから、もしかして送電は危険な無線方式ではなく有線方式が可能? と思ったりしたが、さすがにに距離によるロスが大き過ぎてCNTを送電に利用することは無理らしい。まー、それがクルーザーへの電力供給として著者がレーザービーム方式を提唱している理由でもあるが・・・残念。
でもまー、もしもクルーザーへの電力供給をレーザービームで可能なくらい正確なビーム制御が可能なら、宇宙から地上へのレーザービーム照射だって簡単だろうけど。
なお、前記した新聞の記事によると、最近英国ケンブリッジ大学がCNTをいくらでも長く製造(長繊維化)できるようになったと発表したとのこと。
この本って、こんなもんかなー?
知性刺激度 ★★★★☆
難解度 ★☆☆☆☆
社会改善志向 ★★☆☆☆
娯楽度 ★★★☆☆
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